東京、青、火花。
――そして、燃えている。
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01.東京
Tokyo/ 2022.07.06 Release
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02.青
Blue/ 2022.08.03 Release
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03.火花
Spark/ 2022.09.07 Release
¥3,000(税抜)/ DDCZ‐2290
REVIEW
25周年を迎えた「あらかじめ決められた恋人たちへ」が、3つの視点から紡ぐトリニティ
(=三位一体)・アルバム
結成25周年を迎えた「あらかじめ決められた恋人たちへ」が、15分超の長尺曲2曲を含むフルアルバム『燃えている』をリリースする。
4部構成の前作『……(リーダ)』(2019)、その後のコロナ禍によるライブ活動の停滞、そしてアフロ(MOROHA)とのコラボ・シングル
「日々feat.アフロ」(2021)を経て、インスト・ユニットとしての意義を問い直すところから制作がはじまったという本作。
エレクトロやアンビエント、さらにポスト・パンク~ポスト・クラシカルなどの要素を、あら恋ならではのDUB的解釈も交えてひとつにまとめ上げた、
レイヤードかつプログレッシブなサウンドとなっている。
そのサウンドに紐付く形で、映画監督・柴田剛が参加した映像作品が公開されるほか、ブックレットには、作家・シンテツによる書き下ろしの小説が付属。
音楽、映像、小説の3つの視点から物語を多角的に紡いだ三位一体=トリニティをコンセプトとしたアルバムとなった。
厚みのあるシンセ・サウンドから、緊張感のあるバンド・アンサンブルへと移り変わるクールなグラデーションが魅力の20分を超えるオープニング曲
「東京」は、オリンピックにまつわる騒動やコロナ禍など、池永が暮らす街の風景や状況の急激な変化をフィードバックした一曲。
ピアノやテルミンを効果的に使った導入部から、後半のギター&ピアノのテクニカルなソロに至る飛躍には、
バンド体制となってから15年目を迎えた“あら恋”の熟成を感じさせる。アルバムの中のブリッジとして機能する「青」は、
エレクトロ~シューゲイズテイストの強い、ノイズ・ウォール・オブ・サウンド。そこから零れ落ちていくような叙情的なメロディとの融合が、
儚いながらも希望を想起させていく。エンディング曲「火花」は、クールな「東京」、叙情的な「青」を経て炸裂する、
解放的でエモーショナルなオルタナティブ・サウンド。攻撃的なギター・リフと鍵盤ハーモニカによる泣きの主旋律が、
ラストパートまでドラマティックに駆け抜けていく。
『燃えている』と名付けられたこのアルバムにおいて、池永が鍵盤ハーモニカに込めたメロディは以前よりもシリアスに響く。
だが、それはただ現状を憂うだけのものではなく、懸命に前に進もうとする決意の現れと言える。茶化して現実逃避するのではなく、
冷笑的にマウントを取るのでもなく、誠実に、客観的に社会を見つめることの重要性――音楽を軸としつつ、映像や小説にもその表現手段を求めたのも、
池永なりの真摯さの証明である。
劇映画のように壮大に展開しながらも、ささやかな日常を丁寧に掬い上げていく、感傷と緩衝のその先に。
あらかじめ決められた恋人たちへのサウンドが、燃えている。
Tokyo
#01東京
東京。朝十時。高田馬場にある編集部に着くと三人のスタッフがいた。休職中にオンライン会議で話したが、実際会うのは初めてだ。 “私”の中で固まりつつある“輪河鈴”像をイメージし「おはようございます」と順番に会釈した。 「あれ、今日はスーさん渋谷でしょ?」編集長が顔を上げ、ぎょろりと目玉を動かす。輪河鈴をスーさんと呼ぶのは彼だけだ。 編プロ『東京物語』の代表で、スタッフ全員に勝手なニックネームを付けている。社長と呼ばれるのが嫌らしく、自らも“編集長”を名乗っている。
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Blue
#02青
その日の昼過ぎ、編集長から電話があり「娘がどうしてもスーさんに会いたいって聞かないんだ」とホームパーティーに誘われた。 以前、小渕先輩から聞いた記憶だと、編集長夫婦は子供に恵まれず、里親制度で新しい家族を迎えたということだった。 私のことをどう話したのか、問い詰めたが編集長は知らないとしか答えない。 脈絡のない話だったが、一人で家にいても落ち込むだけだからありがたかった。
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Spark
#03火花
「アンタが見たのは『クストゥデス』。でもそれは偉い大人たちの言葉で、アタシは『あいつら』だし、 最近は『ダム・サーファー』ってのがオシャレみたい。歴史をたどると天使とか悪魔とか死神とか、国や年代によって呼び方は様々って感じだね」 「クストゥデス?」青の口から発された聴き慣れない言葉を繰り返す。デスという語尾が死神を連想させた。 「クゥィス・クストゥディエト・イプソース・クストゥデス」
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LIVE
「Dubbing XIII」
レコ発ワンマンライブ
- 出演
- あらかじめ決められた恋人たちへ
- 公演日
- 2022年9月21日(水)
- 会場
- 新代田 FEVER
- 開場/開演
- 19:30 / 20:00
- 料金
- ¥4,000 1Drink別
ALL STANDING - チケット先行メール予約受付
- 7月6日(水)18:00~7月15日(金)23:59
氏名枚数をご記入の上、arakajime@gmail.com までメールお送り下さい。
公演当日、FEVER受付にて前売料金で対応致します。
当日開場時間より、メール予約頂いたお客様から優先入場となります。
なおネーム対応の為、先着順での受付入場とさせて頂きます。 - 一般発売 7月16日(土)各プレイガイドにて
- チケットぴあ ーーー 0570-02-9999 ・ http://t.pia.jp/ ( Pコード:221-354)
ローソンチケット ーーー 0570-084-003 ( Lコード:73168)
イープラス ーーー http://eplus.jp (一般用URL:https://eplus.jp/sf/detail/3661130001-P0030001)
PROFILE
1997年、池永正二のソロ・ユニットとして活動がスタートした叙情派エレクトロ・ダブ・ユニット。
2008年に大阪から東京に拠点を移すと、バンド編成での活動を開始。現在は池永(鍵盤ハーモニカ、エレクトロニクス)、
劔樹人(ベース)、クリテツ(テルミン、パーカッションetc)、オータケコーハン(ギター)、GOTO(ドラム)、石本聡(DUB PA)の6名に、
PAを加えた7名がコアメンバーとなっている。
鍵盤ハーモニカによるノスタルジックなメロディと、ニュー・ウェーヴやUK DUB、さらには90’sオルタナティブに影響を受けたサウンドが持ち味。
ライブでは、池永の咆哮やフィードバックノイズを伴った轟音のパフォーマンスで、全国のフロアを沸かせている。
映画「窓辺にて」(稲垣吾郎主演・今泉力哉監督)、「連続ドラマW 鵜頭川村事件」(松田龍平主演・入江悠監督)の音楽を担当するなど
劇伴作家としても活躍する池永のほか、メンバーの個人活動も非常に多彩。
COMMENT
前作のレコ発ライブが終わると同時にコロナが始まり、以前から考えていた自分なりの東京を描こうと制作を始めたものの、 なかなかうまくハマらず、そうこうしているうちにコロナやオリンピックや色々な事がいよいよな状況になってきて、ライブも打ち上げもなく、 人とも会わず、混沌としているのだけどやけに静かで、ゆっくり踏み潰されていくような、何も特別な事なく日々が日々のまま、 戦争が始まり、久々の友人は元気そうでよかった、久々のライブは楽しかった、共感したり、運動不足だったり、 なーんもやる気が起きなかったり、目の前の事をしっかりやろうと引き締めたり、メンバーが一人離れてしまったり、 この3年なんか色々あったような気もするが、もう思い出せなくなってきているし、だからこうやって作品が完成して、 むちゃくちゃ思い入れが(なんならいつも以上に)詰まっているのは絶対なのですが、もはやそれがなんなのか分からない。 久々にそういう作品になった。そういう3年間だったんだろう。
やっとアルバムができました。
今のあら恋らしい叙情的でパワフルなアルバムになりました。
聴いて読んで観て楽しんでください。
また久々にガッツリとワンマンライブをやりますので、是非遊びに来てください。
さあ、やっとこれから。
お元気ですか?
池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)