もっともタフで、もっともDUBな、あら恋。
叙情派シネマティック・ダブ・バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」が、約1年半ぶりにリリースするニュー・アルバム『響鳴(きょうめい)』。前作に続いて完全なインスト・アルバムとなった本作は、池永正二のソロ・ユニットとして活動を開始して以来、常に大切にしてきた“オルタナティブとしてのダブ”を追求した、あら恋の原点と進化の両面が刻まれたサウンドとなった。フロア仕様で鳴らされるダンス・ミュージックでありながら、深く心の奥底に響き渡るダブでもある――そんなあら恋ならではの魅力が、鍵盤ハーモニカの切ないメロディに乗って届けられる。
あらかじめ決められた恋人たちへ、通称“あら恋”の音楽を一言で解説するならば、鍵盤ハーモニカによって奏でられる叙情的なメロディと、ダイナミックなバンド・サウンドが直感的なダブ・ミックスによってスリリングな融合を果たしたものである。ドラムンベースやシューゲイザーの要素も取り入れた、歌詞とボーカルのないインストゥルメンタル~ダンス・ミュージックとしての利点を活かし、リスナーがどのようにでも解釈できる余地と余白を残すことで、逆説的に希望や優しさへと繋がるエモーションをその魅力としてきた。バンマスである池永正二曰く、「聴いている人の背中をポンと押してあげられるような」――と、“シネマティック”とも称されるその音に込められる想いは、いつだってポジティブなオーラを放っていたと言える。2021年に配信された「日々 feat.アフロ(MOROHA)」も、コロナ禍と対峙しながら、あくまでその先を見つめる目線のあたたかさが琴線に触れたのだ。
だが、令和以降も混迷の続く世界情勢に対して、池永は敢えて希望を見出すことを止めたという。息苦しさや諦念……そういった現状へのもどかしい感情と真正面から向き合いながら、それをひとつの音楽として提示するべく制作を開始。その中で辿り着いたのは、音楽家としての彼のアイデンティティであり、ずっと大切にしてきたダブという表現、そして、そこから派生したオルタナティブな音像であった。全7曲収録の『響鳴』は、結果的に、あら恋の根幹=rootsを突き詰めた、もっともストイックで、もっともタフなダブ・ロックアルバムとなった。
すでにライブでも披露されているオープニング「Round」は、鍵盤ハーモニカを使わない、無骨なダブ・ナンバー。エレクトロニクス×バンドによって重厚に響くビートは、本編を覆うモノトーンの色合いを象徴している。第1弾シングルとなった「Stance」は、ON-Uサウンドへの深い愛とストリートの目線を反映したメロウなダブ。ソロ時代のあら恋を彷彿とさせる都会の寂寥感と浮遊感は、自然とステップを踏み出したくなるものだ。3曲目、アルバムタイトルの変奏とも言える「共振」はダイナミックなロック・チューンで、踊って泣ける“バンド・あら恋”の真骨頂とも言える楽曲。ただ高揚感を誘うだけではなく、ノイジーで陰を感じさせるところもポイントとなっている。
本作の中核を担うのは、オータケコーハンのファンキーなギターとテクニカルなGOTOのドラムが推進力となり、重戦車のように突き進むダブ・ロック「Come」、クリテツのテルミンによる儚げなメロディもフィーチャーされるダンス・トラック「Contact」であろう。疾走感を纏いながら、低く蠢くような劔樹人のベースに加え、シンセの低音などもしっかりと強調されているのが特徴的で、レイド・バックに逃げない、張り詰めた演奏が安易な一体感や共感を拒否する強靭さを獲得している。
跳ねるように奏でられる鍵盤ハーモニカとトリッキーなリズム・チェンジで飽きさせない「sketch」、そして終幕は、インダストリアルでクールなバラッド「dawn」で締めくくられる。「dawn=夜明け」とタイトルに冠されているが、日の出という現象にわかりやすく希望を匂わせたものではない。現代の不穏な都市と生活を、まるでフィルムに焼き付けるかのようにざらついた情感として変換し、静かに、物悲しく朝を迎えるまでの一連の景色――あくまで主体は、いつまで続くともわからない“夜”の深さを描写している。劇的な変化はそこにはない。だからこそ、日々を懸命に、誠実に生きていくべき――そんな虚飾のない、実直な想いを切り取っているから、本作は圧倒的なエネルギーに溢れているのだろう。
池永正二は、あら恋として、また、映画、実写ドラマ、CMを中心とした劇伴作家としてこれまで活動を続けてきた。あら恋用の個人レーベル「KI-NO Sound Records」を設立し、インディペンデントな立場となってからも10年が経つ。配信の整備により広く聴かれる環境にあるとはいえ、音楽家が大きく稼ぐのは難しい世の中である。だが、それでも状況が許す限り、信じた音を奏でていくのだという意思。それが本作に通底する、隙のないダブ・サウンドとして昇華されているのである。
「Dubbing XIV」
あらかじめ決められた恋人たちへ レコ発ワンマンライブ
京都 2024年1月14日(日)@Club METRO
Dub Mix:石本 聡
open 17:00 start 17:30 advance ¥4,000+1D
受付・詳細 https://www.metro.ne.jp/
<e+前売チケット>11/1(wed)10:00~ https://eplus.jp/sf/detail/
VJ : rokapenis、照明:谷田 明彦、Dub Mix:石本 聡
open 18:45 start 19:30 advance ¥4,500+1D
<e+プレオーダー>11/2 thu 18:00 ~ 11/8 wed 23:59 受付URL https://eplus.jp/
<一般発売>11/18 sat 10;00~
e+販売 (URL) https://eplus.jp/dubbing-xiv/
ぴあ P CODE:255-121
ローソンチケット: https://l-tike.com/arakoi/
問い合わせ WWW 03-5458-7685
主催:BIAS & RELAX adv. 企画制作:BIAS & RELAX adv.
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大阪 2024年1月13日(土) @Namba BEARS open:16:30 start17:00 advance ¥2,500 Door ¥3,000
「Anasickmodular」 あらかじめ決められた恋人た
Info: slug122020@gmail.com / i
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