インタビュー企画 vol.1:あら恋ワンマンライブシリーズ「Dubbing」とは 


「Dubbing」は、叙情派エレクトロ・ダブ・ユニット、あらかじめ決められた恋人たちへのワンマンライブシリーズである。
2010年4月から2011年12月までに3度開催されており、フェスやブッキングイベントでは不可能な120分を超えるロングセット×アイディア満載の構成で、オーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいる。
さらに2011年12月には、その番外編とも言える“対シネ”イベント「Mixing 01」も開催されるなど、“あら恋”の魅力をあますことなく伝えるイベントとして、バンマスである池永正二(鍵盤ハーモニカ、トラック)も力を入れている。

そして2012年4月。イベント開始から2周年を記念して、「Dubbing 04」の開催が決定した。
これまでは東京公演のみであったが、今回は東京・名古屋・京都3都市でのワンマンツアーとして開催。また東京会場は、あら恋単独ライブとしては最大規模となる恵比寿リキッドルーム!!
映像、照明、DUB PA、そしてオーディエンス。
それらすべてが有機的に交わる彼らの真骨頂に震えること間違いなし!

 


 

ここでは、これまでのDubbingシリーズを、池永の言葉を交えて簡単に振り返ってみよう。

【2010年4月24日“Dubbing 01”@O-nest】
2008年から東京で本格的に活動を開始した“あら恋”は、大阪時代には不定形であったユニットでの活動の大半を、バンド編成に集約する。
2009年には、50本を超えるライブを敢行。大阪時代をも超える攻めの姿勢を貫き、東京でもじわじわとその評判と知名度を上げていった。
さらに、2008年10月に3rdアルバム『カラ』を、2009年7月にはライブ音源をエディットしたフェイクメンタリーアルバム『ラッシュ』をリリース。
さらなる飛躍を音楽ファンから期待されており、その回答としてあら恋とイベントプロモーター・Doobieとのタッグで立ち上げられたのがワンマンライブシリーズ「Dubbing」であった。
そのコンセプトとして池永が提案したのが、
◎120分を超えるロングセット/2部~3部に分けた演劇のような構成
◎イベント用に作成した特別映像の上映
◎新曲の初演奏
といったものである。

「東京に出てきてから誘われるライブはどんなイベントであっても特別な理由がない限り全てやってきて、そのブゥワーっていろんな場所でやっていく中でPAの宋さん、石本さん、照明の松野さんと出会ってあら恋組の面子が揃ってきたんです。映像も大阪から一緒にやってるRKP斉藤君が東京に居てたり。だったら次はワンマンやねって話になって。じっくりと時間をかけて、照明や映像も交えながら、“これぞあら恋”みたいな世界観を見せたいと。ブッキングでのライブを短編とするならば、Dubbingは“あら恋THE MOVIE”的な(笑)。つまりは映画です。」
開催されたライブのオープニングでは、ステージの前に紗幕(照明の位置によって後ろが透けて見える幕)を設置。
RKPによる撮り下ろし映像が流れる後ろで、メンバーが演奏するスタイルを見せた。
構成も、バンドパート~ソロパート~バンドパートという3部構成で、重厚なDUBから哀愁漂うバラード、熱狂のダンス・サウンドまで、幅広いテイストの楽曲を披露し、
そのコンセプチュアルな世界観でオーディエンスの心をつかんでいる。

「Dubbing 01のオープニングでは、紗幕をステージと客席の間に置いて、そこにRKPの映像を映しながら、その後ろで演奏しようと。じつはあの紗幕は、PAの宋(基文)さんの手作りのものなんですよ。会場入りしてメンバー含むみんなでまず紗幕の設置から始めました。宋さんや照明の松野さんやRKPも含め、舞台の制作にかかわっている人も多いから、そういうアイディアを自分たちなりに実現できる。ほんと手作りです。だからDubbingのときって、メンバー全員、自分のパート以外の役割も多くて大変ですけど、面白いですよ」
探り探りで行われたDubbing 01。その舞台裏では、様々な事態が起こっていたようだ。
「あの日っていろいろあって、4月やのにライブ終わったらひょうが降ってきたり、10年以上使ってたHDがライブ中にいきなり壊れたり。結局iPODからオケの音を出したという(笑)。あのライブから、“PCを導入しよう”と誓いました(笑)。他にもなんかいろいろあって。たぶんいろんなモノが観に来てたんだと思います」

 

【2010年11月25日“Dubbing 02”@新代田FEVER】
Dubbing 01が高い評価を受けたこと、 さらに、Rock on the Rock、朝霧JAM、SUMMER SONICといった大型フェスへの 出演もあって、あら恋の知名度は急激に増すことになる。 その盛り上がりに応えるかのように開催されたDubbing 02は、会場を新代田FEVERに変更した。 基本的なコンセプトは01を引き継ぎ、コンセプチュアルな構成で約2時間のロングセットを披露。 低音が大きくうなるFEVERの特性を活かした破壊的なDUBサウンドは、オーディエンスの度肝を抜いた。

「FEVERは音がでかい!特にLow(低音)はすごい。うちのPAもワンマンだしガッツリ音出せるから。もうガンガンブンブン出してた。この日のオープニングは、カーテンをステージ前に張ってその後ろで演奏をはじめました。演奏が始まってるのにカーテンが開かないというのがやりたくって。なんか不思議でしょ。客電が落ちて爆音が鳴ってるから明らかにライブが始まってるのにステージ上のメンバーの演奏姿が見えないっていう。途中から僕が袖から出てきて自分で幕を開くっていう。メンバー本人が開幕するってのもおもろいなぁと思って(笑)」

 

この頃、新作『CALLING』の制作にちょうど入った時期でもあり、長尺のダンス・サウンドにますます磨きがかかっていた(アンコールで見せた『錆びる灯』の美しさはまさに圧巻であった)。また、この日のライブはネスト同様、USTREAMでも生配信され、来場できなかったファンにもフォローが図られている。

「このライブの真ん中あたりに、「Back」のPVを撮ってもらった柴田(剛)くんが自身の映画『堀川中立売』を宣伝する算段になっていたんですけど、彼が予定よりも2曲遅れて会場入りしてきて困りました(笑)。一方で、自分たちの演奏や演出面では特にハプニングも起きなかったし、ええ感触でしたね。01と02の間に様々なフェスで演奏したこともあって、やっとまとまりのある音を出せるようになったのかな。ドラムのキムもこの頃からクリックを使いはじめたり、各メンバーがいろんな試行錯誤をしてくれていましたね」


【2011年7月9日“Dubbing 03”@渋谷WWW】
Dubbing 03は、場所を元映画館であるWWWに移して開催された。
これは『CALLING』のレコ発記念ライブともなり、演出にもより一層の力が注がれることとなった。WWWは、元映画館のレイアウトをそのまま活かした特殊なレイアウトの箱であり、ステージを見下ろす形で客席が設置されている。
一方で、会場に常設されたスピーカー「FUNKTION-ONE」は低音にバッチリ対応しているほか、スクリーンも大型で観やすく、あら恋にとっては非常にやりやすい場所と言えた。
チケットの売上に一喜一憂していたメンバーを尻目に、当日は超満員。
FUJI ROCK出演も決まった話題のバンドとして熱い注目を浴びる中、ライブが行われた。
白の幕で仕切られたBOX状の舞台装置(スクリーン)や、ゲーム機のワンセグ機能を用い、TV番組をリアルタイムでザッピングするRKPの映像処理など、驚きのアイディアがこのライブにも多数盛り込まれていた。

「照明の松野さんが産休で参加できなかったのですが、代わりの照明さんに入ってもらいました。WWWの大きなスクリーンを使い倒そうと思って、映像はRKPだけじゃなくて、ミッチェくんにも参加してもらっています。「ムダイ」という曲のときには、リアルタイムでTVをザッピングしたんですけど、あれは3・11のあとに出来た曲で。反原発とかポリティカルな主義主張じゃなくて、もっと庶民レベルのいかんともしがたい気分を込めた曲なんですけど、映像をザッピングしたときに、ちょうどNHKで原発関連の番組やっていて。他のチャンネルに変えたらバラエティでゲヘゲヘ笑っていたり、この曲のなんとも言えない気分にばっちりはまってて、やってる僕らも驚きました。ほかにも映像や照明関係では、オイルショーをしたり影絵を使ったり、図書館の映像をバックに演奏したりとか、いろいろやりました」
「舞台の下手に置かれていた、白い幕で仕切られた装置は小型のスクリーンです。オープニングのSE「テネシー・ワルツ」が流れているときに、石井隆監督の『天使のはらわた』を流してました。誰も気付かないかなと思ったんですけど、ライブを観に来てくれた松江(哲明)監督だけはちゃんとわかってましたね。あのスクリーンも、当日の朝からみんなで作ったものです。だから会場への入りが早い(笑)」
そしてDubbing 03で特筆すべきは、柴田剛監督による話題のPV映像と同期して演奏された「Back」であろう。
大型スクリーンに広がる京都の光景に、鍵盤ハーモニカの叙情的響きと轟音が絡み合ったこの7分間は、2011年のあら恋ライブのハイライトと言える素晴らしい仕上がりであった。
アンコールの「ラセン」では、ゲストとして大竹康範(LAGITAGIDA、ex.マヒルノ)も参加し、『CALLING』の世界を昇華した濃密な内容でオーディエンスを魅了した。

「アルバムをリリースしてからほぼ一発目のライブで、その出来にも結構納得いってたんですよ。打ち上げも盛り上がっていい気分で帰ってたんですけど、帰り道で道路でこけて流血して、8針縫いました(笑)。たまたまヤンキーぽい若い兄ちゃんがブワァって走ってきてくれて、こういう時のヤンキーってほんと頼りになるっていうか、ものすごいやさしいねんね。氷とティッシュ買ってきてくれて、血を拭いて氷で冷やして、助かりました。その足で救急病院に行ったんですけど、宿直の先生が皮膚科で(笑)。塗り薬もなんか首ひねりながらやし、“結構切れてますね”って、知ってるわ!だから来てるねん!(笑)ちゅうか夜中に救急で誰が皮膚科に行くねん!先生痒いんです!って。と思いながらも、シューンってなってました。だからDubbing 04は、ライブに全力を尽くすのはもちろんですが、無事に終わって欲しいです! 怪我したくない(笑)!」

 


 

4月6日から開始される「孤高」と銘打たれたワンマンツアー。
12月15日に開催されたDubbingシリーズの番外編「Mixing 01」でも新曲が披露されていたが、
今回も新たな仕掛けや楽曲が多数用意されていることだろう。
なぜ孤高なのか?
その答えは、ライブ会場にて明かされる。

「いろんな仕掛けをメンバーみんなで考えている最中です。もちろん、演奏もしっかりしたものを聴かせたいと思っています。シネマティックなサウンドというより、ライブを“シネマ”そのものとして感じてもらいたい。お時間ある方は是非、Dubbingをその目で確かめに来てもらえればと思います」

ツアー、チケット先行予約受付中!
12月21日(水)12:00~12月25日(日)23:00
http://l-tike.com/arakoihp/

(text : 森樹)

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